もめる相続のパターン

相続は、亡くなった方が残した財産をすべて引き継ぐことですが、相続人が2人以上いる場合、誰がどの財産をどれだけ取得するかを話し合って決めることになります。

ところが、被相続人の生前中は仲のよかった相続人間でも、遺産分割の話をすると、それぞれが譲らず、話し合いがまとまらないことが多くあります。家庭裁判所の遺産分割調停を利用しても2、3年かかることもよくあることです。相続開始から解決までに5年くらいかかってしまうと、デフレが続いている今の経済情勢では、解決した時には財産の価値は半分以下になってしまうこともありえます。

もめる相続には幾つかのパターンがあります。ほぼ100%もめるのは、相続人が先妻の子供と後妻である場合や内縁の配偶者や婚外子がいる場合です。この場合は、立場の違う相続人間を部外者と捉えてしまうので、紛争は激しいものになります。

このように立場の違う相続人がいなくても、配偶者が亡くなって兄弟姉妹のみが相続人である場合もかなりの確率で争いになります。

  1. 遺産が不動産や好調な事業しか財産がない場合は、相続人の誰が幾らで取得するかをめぐって争いになります。
  2. 他の兄弟より多くの援助を受けている者がいる場合は、他の相続人に不満が溜まっているので、激しい争いとなります。
  3. 家業を安価な給料で手伝っている者や親の身の回りの世話を一部の者が行っている場合、これらの者に不満が溜まっているので、争いとなります。
  4. 被相続人と同居していた相続人がおり、それ以外の相続人は被相続人と疎遠になっている場合、疎遠になっている相続人が、同居の相続人に対し、財産を隠しているとか被相続人の財産を隠れて譲り受けていたと疑って、争いになります。

2.については特別受益、3.については寄与分という制度で相続人間の公平を図られているのですが、明確な証拠がないため立証できなかったり裁判所で認定される金額が低いので、根本的な解決には至っていないというのが実情です。

以上については、事前に遺言を準備しておくことで、かなりの争いを防ぐことはできるのですが、自筆遺言には落とし穴があります。次回は、「自筆遺言の落とし穴」について、お話ししたいと思います。

執筆者 弁護士 岩﨑利晴

(PDF版はこちらから)

カテゴリー: ニュース パーマリンク